発電機の容量選定
必要容量に対して小さな容量のエンジン発電機を選定し、誘導電動機などの始動容量の大きな負荷をかけると、エンジン発電機の電圧が急激に低下し、負荷が正常に動作しないことや、他の負荷機械のマグネットスイッチやリレー類の動作不良、他の電動機負荷の減速や停止、また、照明灯などのチラツキや水銀灯の消灯などの思わぬトラブルとなることがあります。逆に大きすぎる容量のエンジン発電機を選定すると、イニシャルコスト及びランニングコストが高くなり不経済となります。また、機械のトラブルの原因にもなります。 すなわち、負荷の中には「定常時」と「始動時」とでは必要とする容量の異なるものがあり注意が必要です。その中で代表的なものが誘導電動機(モータ)でほとんどの機械に使用され一般的なものです。「定常時」とは、誘導電動機では定格で仕事をしている状態をいい、「始動時」とは回りだす時をいいます。誘導電動機の始動時は定格時の6倍以上もの電流が流れるものもあり、大きな電力を必要とします。
誘導電動機(モータ)の発電機容量の算出について
エンジン発電機の負荷で一番多く使われているのが、誘導電動機を用いた負荷です。これら誘導電動機の場合は効率、力率、始動電流(始動階級)、始動方式を考慮する必要があります。また、発電機容量をできるだけ小さくするためには、始動電流の小さなモータを選定したり、始動方法及び始動順序も考慮する必要があります。
(1)定常運転時の発電機容量
※モータ入力(KW)
※モータ入力(KVA)
(2)モータの始動時などの瞬時電圧降下を考慮した場合の発電機容量
[KVA]
PG:発電機容量(KVA)
Xd’:発電機の過度リアクタンス(一般には0.15~0.30)
ΔV:瞬時電圧降下率(一般には0.25~0.30)
Pm:モータの出力(KW)
β:モータの1KW当たりの始動入力(KVA)
C:始動方式による係数
(3)概算式
上記の式でXd’が不明でΔVに特別な制約がない場合、
Xd’を0.21、ΔVを0.30として、
発電機容量=(1/2)×Pm×β×C [KVA]
として、概算計算ができます。
電動機の始動KVAと標準効率
電動機出力(KW) | 始動KVA | 標準効率% |
2.2 | 9.0 | 83 |
5.5 | 8.0 | 83 |
11 | 8.0 | 83 |
22 | 8.0 | 87 |
30 | 7.5 | 88 |
37 | 7.5 | 89 |
45 | 7.0 | 90 |
55 | 7.0 | 91 |
75 | 7.0 | 92 |
始動係数C
始動方法 |
C |
直入れ |
1 |
Y-Δ |
2/3 |
リアクトル |
X/100 |
補償器 |
(X/100)2 |
(4)順次始動時の発電機の容量(3台の場合)
①モータ各々の定常状態入力KVAと始動時の入力KVAを計算します。
定常時 | 始動時 | |
モータ1 | M1 | PG1 |
モータ2 | M2 | PG2 |
モータ3 | M3 | PG3 |
②必要発電機容量は(モータ1→モータ2→モータ3の順番で運転する場合)は、上表のPG1、M1+PG2、M1+M2+PG3の一番大きい値を発電機容量として選定します。 「注意:発電機の許容電圧降下について」
発電機の瞬時電圧降下の許容値は負荷の条件によって決まりますが、その主なものは、
○負荷を異常なく始動できること。
○投入されている遮断器、電磁接触器などの保持が釈放されないこと。
などです。
低圧回路の電磁接触器などの操作電圧は、JISでは定格電圧の85~110%の範囲で動作が正常であればよいと規定されていますが、実際の製品ではもう少し低い電圧が許容できることから、一般に瞬時電圧降下は25~30%以内としています。 ただし、負荷が水銀灯、コンピュータを駆使した負荷などや回生制御を必要とするエレベータなどの負荷では発電機の瞬時電圧降下を十分考慮して発電機容量を決定する必要があります。
■発電機容量と使用できるモータ容量の範囲
EG容量KVA |
15 |
25 |
45 |
60 |
75 |
90 |
125 |
|
モータ容量KW | 直入始動 |
5 |
7.6 |
14.9 |
20.5 |
25 |
30.5 |
42.5 |
Y-∇始動① |
7.5 |
11.4 |
22.4 |
30.8 |
37.5 |
45.8 |
63.8 |
|
Y-∇始動② |
11.9 |
19.5 |
34.3 |
46 |
58 |
68 |
97 |
EG容量KVA |
150 |
220 |
300 |
400 |
500 |
600 |
800 |
|
モータ容量KW | 直入始動 |
51 |
76 |
102 |
136 |
175 |
205 |
243 |
Y-∇始動① |
76.5 |
114 |
153 |
204 |
263 |
308 |
365 |
|
Y-∇始動② |
115 |
172 |
231 |
308 |
390 |
460 |
575 |
※上表の使用例は目安値であり、要求される瞬時電圧降下、モータの負荷率、始動容量の大小またモータの新旧、効率の良悪で発電機容量が異なります。
●モータ始動時の瞬時電圧降下を無負荷電圧の30%以内ととします。 ●モータの始動KVAを1KWあたり7KVAとします。 ●モータの効率85%、負荷率を約90%とします。 ●ターボ付エンジンの負荷投入容量はエンジンの正味平均有効圧力に左右される場合があります。(モータ使用例および早見表の数値はターボ付の条件を考慮していません。) ●Y-△始動①はオープン方式、②はクローズドY-△方式を示していますが、始動状態により必要発電機容量が異なります。 ●非常用発電設備(特に防災用発電設備)の容量算定には適しません。 ●上表のモータ使用例は目安的な値であり、使用負荷やモータの特性により若干の変更が必要です。
■発電機容量と使用できる交流アーク溶接機の台数
EG容量KVA |
15 |
25 |
45 |
60 |
75 |
90 |
125 |
|
交
流
ア
|
ク
溶
接
機 |
180A |
– |
1 |
3 |
4 |
6 |
8 |
11 |
200A |
– |
– |
3 |
4 |
6 |
6 |
9 |
|
250A |
– |
– |
1 |
3 |
4 |
5 |
8 |
|
300A |
– |
– |
– |
3 |
3 |
4 |
6 |
|
400A |
– |
– |
– |
– |
3 |
3 |
4 |
|
500A |
– |
– |
– |
– |
1 |
2 |
3 |
EG容量KVA |
150 |
220 |
300 |
400 |
500 |
600 |
800 |
|
交
流
ア
|
ク
溶
接
機 |
180A |
13 |
– |
– |
– |
– |
– |
– |
200A |
11 |
16 |
– |
– |
– |
– |
– |
|
250A |
9 |
14 |
19 |
– |
– |
– |
– |
|
300A |
7 |
10 |
16 |
21 |
– |
– |
– |
|
400A |
6 |
7 |
9 |
15 |
21 |
22 |
33 |
|
500A |
3 |
6 |
7 |
12 |
17 |
18 |
25 |
●上の台数はコンデンサーなしの場合です。
●上表の算出に当たっては交流溶接機の負荷率(80%)を加味して、算出したものです。
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